一般社団法人 不動産ビジネス専門家協会

明日の不動産ビジネスを切り拓く 不動産ビジネス専門家協会

(鼎談)不動産を「使って」どこを目指すか?

~専門家が語る「相続・事業承継」の極意~

尾原央典(弁護士/関口総合法律事務所)
平岡直記(株式会社裕幸社代表取締役)
花光慶尚(税理士/花光慶尚税理士事務所)
 

(2019年11月発行/PREB Report Autumn & Winter 2019より転載)

(司会)本日はお集まりいただきましてありがとうございます。まず、当協会に入会した動機、きっかけを教えてください。

(尾原) 不動産に関わる案件を多く扱っており、不動産の実務についてもいろいろ勉強したいと思い、そのような団体や勉強会のようなものをネットなども使って探していたところ、この協会に出会いました。また、協会のホームページを見て、信頼できるように思いましたし、登録専門家に弁護士さんがいたことも大きかったです。


(花光) 私は、登録専門家として在籍している公認会計士の高野さんに誘われたことがきっかけです。高野さんとは独立前からの知り合いで、PREBができてから1年くらいのときでした。横の繋がりの必要性を感じました。


(平岡) サラリーマン時代の同僚であった中沢さんからこの協会のことを聞き、協会の趣旨と活動内容に興味を覚えたので入会しました。

 

(司会)ご自身の仕事・業務内容(特に不動産と関わりのあるところについて)お聞かせください。

(平岡) 私は、東京都内で不動産賃貸業を営むとともに、ビル経営についてのコンサルティングを行っています。また、不動産経営のビジネススクールの講師も務めております。


(花光) 私は地主やサラリーマン大家の方をクライアントとしているので、その税務申告や節税対策等を業務として行っています。


(尾原) 不動産関係の顧問先が複数ありますので、不動産の売買や賃貸について日常的に相談を受けています。例えば最近経験したケースですと、収益物件を購入しようとしている不動産業者様からの相談で、購入しようとする物件のテナントとの賃貸借契約が定期建物賃貸借契約書の体裁になっているのですが、実際にはその法律要件を満たしておらず、定期借家としての効力に疑問があるといったことがありました。そのような場合、事前に弁護士によるチェックを経て問題点を把握しておくことで、その収益物件を取得した場合には、定期借家ではなく普通借家として扱われることになることを想定し、取得後にテナントに退去を求める場合には相応の立ち退き料の負担を覚悟しなければならない、といったことを事前に予測することができますので、それを踏まえて売主との間で売買条件の交渉をしたりすることができます。


(花光) 定期建物賃貸借契約って厳しいですよね。そういうのも含めてチェックなどなさってるんですか?


(尾原) ええ、契約書のチェックから入るのですが、期間満了後もそのままになってしまって普通借家契約になってしまう件などもありましたね。そのへんのことも説明してフォローしたりしています。


(花光) 土地の賃貸借の場合、法人が絡んでいるときには定期借地契約のほうが税理士としてはやりやすいことがありまして、法人地主のときに節税等を考えて定期借地を噛ませることが多かったりするんですが、そういうのも相談されていますか?


(尾原) 土地の定期賃貸借もやりますね、公正証書を作って。でも、弁護士的に注目するのは使用貸借か賃貸借か、っていうこともあるんですよ。


(花光) 賃料が相場に合っていれば、弁護士的にはそこまで問題にしない、差額で税金の損得はあるかもしれないけど、というところですか?


(尾原) リーガル的にはそうですね。


(平岡) 何か問題がないと弁護士さんに相談には来ないですよね、なかなか。税法的な問題と法律的な問題というのは噛み合わないものですよね。


(尾原) 固定資産税に少しプラスしたくらいの金額だと賃貸借にはならないですね、などは言いますね。具体的な金額の話は弁護士から言うことはあまりないです。本人が持っている希望額が法律的にどう評価されるかを考えるだけです。


(花光) 税理士の場合、本人の希望だけでなく税務署の目線を無視するわけにはいかないですね。
 

 

(司会)当協会に入会して良かったと思えること、メリットとして感じていることはありますか?

(尾原) 業界新聞にコラムを書かせていただいたり、セミナー講師をさせていただいたりして、広く活躍の場をいただけたことです。それから、定例の勉強会とその後の懇親会も楽しく参加させていただいています。


(花光) 得意としている分野を異にする専門家が多く集まっているので、人脈が広がることが最大のメリットでしょうか。


(平岡) そうですね。私もやはり色々な方との交流が拡がったことが一番のメリットだと感じております。

 

(司会)普段、相続・事業承継案件には当たられていますか?

(尾原) 遺産分割や遺留分減殺請求、遺言書の作成など相続案件は広く扱ってきました。事業承継案件も相談を受けることがあります。円滑に事業承継を進めることを主眼とした遺言書を作成したこともあります。


(花光) 自分のクライアントについては継続して生前対策をアドバイスしています。そのほか、他の登録専門家等から相続や事業承継に係る案件のご紹介を頂くこともあります。

 

(司会)相続・事業承継案件に対応する際、気を付けていること、こだわっていることを教えてください。

(尾原) 依頼者の方に、状況を丁寧に説明して理解していただいたうえで、その意思を尊重するようにしています。弁護士は、とかく依頼者を説得して速やかに話し合いを進めようとしがちなこともあると思いますが、相続案件においては、特に依頼者の心情への配慮も大切と考えていますので、あせらずじっくり取り組むように心がけています。


(花光) テクニカルなことももちろん大事なのですが、それよりもやはり「家族仲良く、円満相続」というのが大前提です。例えば、後継者が事業を承継するのに必要な株式、事業用資産を取得することは当然のことですが、それだけだと相続人間のバランスが崩れることも多いですので。


(平岡) 相続対策に関しては、節税対策の前に不動産賃貸経営力を身につけてもらう事。そして事業承継のポイントは、不動産賃貸業がメインであるならば「いつ」、「誰に」、「これからの年間目標賃料」、「その目標根拠」…要は出口と継続性を承継者同士が認識できることでしょうか。

 

(司会)相続・事業承継に関して、「これだけは知っておいてほしい」ということがありましたらお聞かせください。

(尾原) 事業や資産など、次の世代である子や孫に遺すべきものを持っている方は、ぜひとも遺言書を作っておいていただきたいということです。できるだけ公正証書遺言にした方がいいです。遺言書に書かれた内容はご本人の生前の本意であり、とても重みがあります。ですから、それがあるのとないのとでは、仮に相続に関して争いが生じてしまった場合であっても、進め方が全く違うものになってくると思います。


(平岡) 正解・不正解が有る訳ではないので、当事者(オーナー)が、最も大切な意思決定が出来るための、「情報収集と意思決定できるための想定問答と準備の仕方」「目標を達成するための、譲る側と受け取る側の共通認識」を理解して準備する事が大事だと思います。節税を気にして資産を小さくするほうにばかり目が行ってしまうと、結局どういうことを実現したかったのかを見失ってしまいます。


(尾原) 資産を小さくするとはどういったことでしょうか?


(平岡) 例えば、1億円という現金は、資産評価上不動産にすることでまず評価が下がり、かつ人に貸すことで貸家建付等にて、更に評価減ができます。更にここで実際から下がった評価と、もし1億円全額を借入にすれば、その差額分は、他の資産から差し引くことも出来ます。


(花光) 節税はそうですね。程度の問題だと思います。賃貸経営力、収益性、まさにそれです。なんで大家や地主が金持ちになったか?不動産を貸して金を得たからです。投資は回収できないと意味がありません。アパート建てても収益性がなかったら経済合理性がないんです。これからはもっと求められてくる。いや、前から求められてたんですけど(笑)


(平岡) 不動産は金額が大きいビジネスだから脇が甘くなるとダメです。過度にやりすぎてもよくないし、自分の立ち位置を見極められないとダメ。 

 

(司会)士業と不動産実務家との連携、コラボレーションの必要性、重要性について、お考えになっていることをお話しください。

(尾原) 不動産実務と法律の知識は、切っても切り離せない密接な関係にあると思います。不動産は、その価値が大きい分、トラブルも大きなものになりがちです。不動産実務家の方は、交渉や取引を進めるにあたって、「ん?これで大丈夫かな?」と感じることのできる感度の良いアンテナを持つべきですし、そのような小さな違和感について気軽に相談できる法律専門家とのつながりを持っておくことはとても有用であると思います。


(花光) 以前に比べ財産に占める不動産の割合は小さくなったとはいえ、重要な財産であるという位置づけは変わっていません。不動産には多くの分野があり、様々な専門家が関わっており、すべてを一人でこなすのは無理です。困ったときに相談できる仲間がいることは大切だと思います。


(平岡) 釈迦に説法にもなりますが、資産家にとっては専門家の合理的な思考と実際のケースごとの整理整頓をしながらの資産経営策の組み合わせをお互いに理解しあえることが重要であり、そこを意識できるオーナーと士業や業者の関係がポイントになると思っています。理想を言えば、専門家は難しくしがちですが、いかにシンプルにわかりやすくできれば信用も得られやすい訳です。そうするために、自分に足らない部分を専門家たちと相談できればいいですよね。


(花光) 財産分けであれ、有効活用であれ、理想形は人それぞれだと思うんですよね。過去の積み重ねとして現在があり、その先に未来があることも踏まえて理想形を探る必要がありますが、そこで専門家が果たす役割が大きいはずです。専門家同士が協力して課題を解決するということには大きな社会的意義があると思います。

 

(司会)今後のご自身の活動展開について、また当協会に期待していることについてお聞かせください。

(尾原) 弁護士というと、実際に紛争になってから依頼するものというイメージが一般的かもしれません。しかし、取引や交渉を法律専門家に相談しながら進めれば、予防できる紛争も少なくないと思います。そのような視点からも、不動産業界の方にお役に立てるような活動をしていきたいと思います。

 

(平岡) 自身の相続対策や事業承継対策も進行中ですが、クライアントやスクール受講者の事例を検討したり、問題解決に取り組んだりすることは、自分にとっても勉強になっていますので、引き続き継続していきたいと思っています。


(花光) 登録専門家の中には酒豪も多いので、身体を壊さないよう活動していきたいですね(笑)。冗談はともかく、可能性を秘めている協会なので、それを形にしていきたいですね。